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高血圧=サイレントキラー
 『沈黙の殺し屋』退治はお任せください!

サイレントキラーとは?

サイレントキラー(病)とは、「忍び寄る殺し屋」という意味です。
1945年2月、クリミア半島のヤルタで第32代アメリカ合衆国大統領ルーズべルトは、英チャーチル首相と歴史的なヤルタ会談を行いました。が、そのわずか2ヵ月後に彼は脳出血で急死しました。臨終時のルーズベルトの血圧は、300/190という重症高血圧でした。
アメリカ合衆国大統領ルーズベルトの命を奪ったのは、気づかないうちに進行していたサイレントキラー病(沈黙の病いという殺人者)だった=高血圧だったのです。

高血圧の多くは、原因が不明の上に自覚症状もないので、知らないうちに症状が進行していきます。

《診察室血圧》
病院や健診施設などで測定した血圧値(診察室血圧)が、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上(140/90mmHg以上)の状態をいいます。

《自宅血圧》
自宅で測定する家庭血圧(自宅血圧)では、それより5mmHg低い135mmHg以上または85mmHg以上(135/85mmHg以上)が高血圧とされます。
高血圧患者さんのなかには、「健康診断では正常血圧だったけど、自宅で測ると高い」という方もいらっしゃいますので、できれば自宅でも測定するようにしましょう。

高血圧の診断と分類
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編):高血圧治療ガイドライン2014より改変

高血圧症の大部分が、本態性(原因を特定できない)高血圧症であるのに加え、もうひとつ厄介な点があります。それは「高血圧特有の症状というものがあまりない」ということです。
高血圧が続くと、頭痛、頭重感、のぼせ、肩こり、動悸、息切れ、発汗などが起こりやすくなりますが、あくまでも、高血圧から起こりやすい深い症状の一例に過ぎません。肩こりや頭痛などは血圧が正常な人にも起こりますし、風邪などの一時的な病気や、心身のストレスなどによっても起こります。それにより、これらの症状から、高血圧であると判断することはできません。

そのため、症状が現れた時にはすでに合併症が進行していると考えられます。重症の高血圧が長く続くと、自覚症状が出てきますが、そのときはすでに、合併症の病気がもたらす症状が体の異常を知らせています。動脈硬化が進行して心臓に負担がかかっていると、動機、息切れ、むくみ、胸痛などが表れ、さらに脳で異常が進行していると、激しい頭痛、吐き気、痙攣などが起こり、腎障害が進んでいると、むくみ、頻尿、多尿、乏尿などが現れます。

高血圧症の合併症

これらの症状が見られるようになった後では、高血圧と合併症の両方の治療を進めていく必要が出てきます。また、重症の高血圧が長い間続いても合併症の自覚症状が出にくいこともあり、この場合は、突然、脳卒中心筋梗塞の発作に見舞われ、そのまま絶命してしまうこともあります。
このように、気づかないうちに、体のさまざまなところで怖い病気が進行していくことから、高血圧=「サイレントキラー」=沈黙の殺し屋と言われます。

血圧レベルと脳卒中発症の頻度

上図のように、初診時血圧が高いほど、脳出血や脳梗塞の発症頻度が高くなります。特に収縮期血圧≧160㎜Hgは、大変危険であるといえます。
高血圧が進行させる重大な病気の予防には、高血圧の早期発見と早期治療がもっとも有効です。そのためには、定期的に血圧測定を行い、高血圧を放置しないことがとにかく重要です。

降圧薬による治療の効果

この図より、高血圧を治療することによって、心臓血管系の合併症が有意に減少することがわかります。

高血圧から起こる合併症

血圧が高い状態をほうっておくと、怖い合併症が進行します。それも、致死率が高い病気が多くなります。高血圧の合併症の起こり方は、人によって多種多様です。
頭痛、頭重感、吐き気、倦怠感、動機、むくみなど、高血圧による深い症状が続いた後に起こる場合もあれば、何の自覚症状もないままに突然激しい発作に襲われ、絶命するケースもあります。
そのような大事に至らないように、血圧をコントロールするとともに、合併症の予防や、早期発見と早期治療に気を配りましょう。近年は、合併症の有無や進行程度を把握できる精度の高い検査がいろいろあり、予防対策も可能になってきました。
そういう意味でも、サイレントキラーには注意したいものです。

糖尿病にも注意を!

糖尿病は高血圧から起こる合併症ではありませんが、糖尿病にみられるインスリン抵抗性と、高インスリン血漿(けっしょう)のメカニズムが関与するため高血圧の人は糖尿病になりやすく、同様に、糖尿病の人も高血圧になりやすいといわれています。
高血圧と糖尿病を合併すると、血管障害が進行しやすく、高血圧と糖尿病双方の合併症が次々と起こってきます。脳卒中、心筋梗塞のリスクも高まりますので、高血圧の人は血圧を下げることが大切といえます。
サイレントキラーといわれるように、高血圧の症状が出ていなくても、日頃から血圧を計っておくことは非常に大切です。

高血圧の予防と治療

塩分をとり過ぎると血圧が高くなります。
塩分のとり過ぎは血液の塩分濃度を高めるように働きますが、ヒトのからだはそれを防ぐために、細胞の中の水分を血液に移行させて、血液の塩分濃度が上がらないようします。すると、血液の量が増えます。そして血液の量が多ければ多いほど、血管の壁には強い力がかかってしまう、つまり、血圧が高くなってしまいます。また、塩分のとり過ぎは、血管を収縮させるホルモンの反応を高めることでも、血圧を高くします。
高血圧の予防には、減塩が第一です。

また、太り気味の場合は減量が大切です。肥満、とくに内臓脂肪型肥満では腹腔内の脂肪組織から血圧を上げる成分がたくさん分泌されてきます。ですから体重を適正にすると、血圧も正常に近付いてきます。そのうえ、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)などの改善効果も得られます。これらの病気はすべて血管の障害を促す原因ですから、減量は高血圧だけでなく生活習慣病全般に、とても効率の良い治療法だと言えます。

減塩や減量と同時に、からだを動かす習慣を身に付けることもお勧めします。からだを動かすことは、体重管理のうえでも必要ですが、それとともに血行を良くして血圧を下げる効果があります。ただ、血圧がかなり高い場合は、運動中に血圧が高くなり過ぎる可能性もあるので、無理は禁物です。

このほか、禁煙を心掛け、アルコールの飲み過ぎに注意しましょう。

降圧目標

  診察室血圧 家庭血圧
若年、中年、前期高齢者患者 140/90mmHg 未満 135/85mmHg 未満
後期高齢者患者 150/90mmHg 未満
(忍容性があれば140/90mmHg 未満)
145/85mmHg 未満(目安)
(忍容性があれば135/85mmHg 未満)
糖尿病患者 130/80mmHg 未満 125/75mmHg 未満
CKB患者(蛋白尿陽性) 130/80mmHg 未満 125/75mmHg 未満(目安)
脳血管障害患者
冠動脈疾患患者
140/90mmHg 未満 135/85mmHg 未満(目安)
注:目安で示す診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが高血圧の診断基準であることから、この二者の差をあてはめたものである。(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」)

高血圧の一般的な治療目標は、135/85mmHgです。
ただし、75歳以上の方では145/90mmHg未満と、やや緩和します。
糖尿病がある場合や、慢性腎臓病で蛋白尿が出ている場合は125/75mmHg未満と、厳格に治療することが勧められています。なお、これらの数値は医療機関で測定した値の目標値(診察室血圧)です。家庭内で測定した血圧値(自宅血圧)は、通常、医療機関での測定値より5mmHgほど低くなるので、上記の数値から5を引いた値を目標値とします。
一方、医療機関で測定した血圧(診察室血圧)は高いが、自宅で測る(自宅血圧)と正常という人もいます。白衣の医療スタッフの前では血圧がアップするという意味で『白衣高血圧』と呼びます。この場合には降圧薬は原則として必要ありません。

ライフスタイル改善の重要性

1.お食事の注意点   おいしいものには塩分が・・・

○ 主食は、できるだけ米飯にしましょう。
パン・めんは、食塩が含まれるので注意しましょう。
○ 汁物(みそ汁・すまし汁・スープなど)はできるだけ飲まないようにしましょう。
 1日に1/2杯以下、汁椀半量が目安です。
 汁物には、汁椀1杯で食塩が1.5~2g含まれます。
○ めん類は、つゆを全部飲むと5g以上の食塩量です。つゆは残すようにしましょう。
○ 漬物・佃煮類は、少量でも食塩量が多いのでなるべく控えましょう。
○ 食卓で使う調味料は、できるだけ控えましょう
  食塩0.5g

○ 外食や惣菜は食塩量が多いので注意しましょう。

塩分/Na(ナトリウム)換算表  Naナトリウム400mg=食塩約1g

食品成分表がNa(ナトリウム)で示されている場合は、以下の計算方法で食塩量を算出することができます。
   Naナトリウム(g) × 2.54 = 食塩量(g)
Naナトリウムの単位がミリグラム(mg)で記載されている場合は、グラム(g)に直す為1000で割ります。
   Naナトリウム(mg) × 2.54 ÷ 1000 = 食塩量(g)

日本人の食塩摂取量は1日平均約13グラムですから、高血圧の人ではその半分程度、6~8グラムに抑えてください。
減塩1グラムあたり、血圧は「0.5~1」下がります

2. 肥満を治す

肥満者には、高血圧の方が2~3倍多いことがわかっています。肥満は高血圧だけでなく、糖尿病やこれに近い状態の「耐糖能障害」、「脂質代謝障害」(総コレステロールや中性脂肪が高値、善玉コレステロールは低値)の“下地”になりやすく、心臓への負担もかけやすいので、心臓血管系合併症の危険因子がまさに集積した状態となります。
運動療法だけで体重を減らすのは困難ですから、食事療法を中心にします。標準体重まで減らさなくても血圧を下げる効果はあり、減量1kgで血圧は「1~1.5」下がります
減量作戦は体脂肪を減らすのが目的で、糖分と脂肪分の制限によってエネルギー摂取を抑えます。ただし、腎臓が悪くない限り、良質のたんぱく質は十分にとるよう心がけてください。
体重が減っても血圧が下がらない場合もありますが、糖、脂質代謝、血行などの面で効果がありますから、減量は欠かせません。

3.酒はほどほどに

飲酒量が増えるほど血圧が高く、高血圧になりやすいこと、毎日飲む人やアルコール依存症の人では禁酒や節酒によって血圧が下がることがわかってきました。
高血圧の人への多くの医学的勧告では、1日のアルコール摂取量を「30㎖以下」に抑えるよう求めています。
これはビール大ビン1本、日本酒で1合、ウィスキーでダブル1杯までということになります。女性や体重の軽い人では、これより少なくするように、という勧告も出ています。
1日30㎖までであれば、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞に対して、むしろよい影響があるという報告もあり、アルコールとはほどほどに上手につきあうことが原則です。

4.適度の運動を

降圧を目的にした運動療法は、軽症の高血圧で心臓血管系の合併症がない場合が対象となりますから、始める前に主治医によく相談してください。手足の大きな筋肉が収縮・弛緩を繰り返す全身運動、例えば歩行、ジョギング、自転車、ゆっくりとした水泳などが適しています。

運動の強度と頻度は
脈拍数=[138 -(年齢÷2)]になるようにし、1回60分×週3回または1回30分×週5~6回が推奨されています。
効果は1か月で現われ、収縮期血圧、拡張期血圧とも、数mmHgから10mmHg下がると報告されています。
降圧薬としてβ(ベータ)遮断薬を服用している人は、運動による脈拍数の増え方が小さいので、脈拍数は運動強度の指標にならないので注意が必要です。
運動の効果は降圧だけではありません。耐糖能障害や脂質代謝障害の改善、ストレスの解消にも役立ちます。

血圧を改善するためには運動を
5.カリウムを十分に

意外に知られていないのがカリウムの効果です。体内の重要なミネラルの一種であるカリウムは、野菜、果物、豆、いも類に多く含まれていて、摂取が多いと血圧を下げる働きがあります。
逆に摂取が少ないと、血圧を上げるように働くので、いま挙げた食品を十分にとる必要があります。ゆでたり、煮たりすると、汁に出てしまいますから、調理法を工夫しましょう。
ただし、腎臓の悪い人ではカリウムは制限しなくてはなりません。
このほか、腸から吸収されない食物繊維、カルシウム、マグネシウムを多く含む食物も血圧を下げるのに好ましいとされています。

6.ストレスの管理を

精神的なストレスが、高血圧の原因になっているという確かな証拠はまだありません。
しかし、ストレスによって血圧が上昇するのは日常、しばしば経験することです。多くの高血圧の方は入院して安静にするだけで、血圧が低下します。これは、リラックスすることで交感神経の緊張状態がとれて血圧が下がるためと考えられています。
もちろん、ストレスを緩和するだけでは高血圧の治療にはなりませんが、日々心身をリラックスさせるように心がけ、ストレスによる血圧の上昇分を取り除くのは大切なことです。

7.禁煙と低脂肪食

喫煙によるニコチンの急性効果として、一時的に血圧が上がりますが慢性的な血圧上昇作用はありません。しかし、本数の多い人では血圧が高くなる時間が多くなります。また、喫煙は心臓血管系の病気の重要な危険因子ですから、禁煙は降圧治療の目的を果たすための必須条件なのです。
血圧との直接の関係はありませんが、動脈硬化の進展防止、冠動脈疾患の危険因子を減らすために、低脂肪食、低コレステロール食にし、魚類を多くとるように心がけましょう。

8.継続が大切

高血圧と診断された時、単に血圧の高さだけでなく、高血圧による臓器障害や危険因子の程度を知っておくことが必要です。これをもとに、生活習慣を改善し、家庭での血圧測定などを継続して実行してください。
よく『高血圧になると、一生お薬を飲まなければいけないの?』とのお尋ねを多く頂きます。
でも、ここまで読み進まれた皆様は、お薬を飲む飲まないより、血圧が高いことの危険性をご理解頂けたと思います。
降圧治療によって血圧を下げ、生活習慣を見直し、心臓血管系の合併症の危険因子を除くことが大切です。
血圧が下がっても、治ったわけではありません。「継続は力なり」の精神で、血圧をうまくコントロールする健康的なライフスタイルをとにかく続けてほしいのです。

ポイント

高血圧の診断に必要な5項目
生活習慣の改善