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脂質異常症 サイレントキラー病

目次

年齢を重ねるにつれ、血管は弾力性を失い、徐々に硬くなっていきます(動脈硬化)。誰しもある程度の動脈硬化を避けることはできませんが、血液中の脂質のバランスが崩れていると、動脈硬化が非常に早く進みます。動脈硬化は自覚症状がないまま進行し、ある日突然脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こします。

脂質異常症とは

血液検査でLDLコレステロール(LDL-C)が高い、中性脂肪(トリグリセライド、TG)が高い状態を以前は「高脂血症」と定義していました。文字どおり血液中の脂質が高くなっている状態です。
健診で測定される脂質には表で示した3つがあり、その他のコレステロールを全て合計した総コレステロール(TC)という指標もあります。
それぞれの判定基準も表に示していますが、この表の値は「食生活の見直しや運動で血中の脂質を改善したほうがよい」という警告の指標です。薬物治療開始の基準ではありません。

脂質異常症の診断基準値と関連する疾患

  基本値 病名 おこりやすい病気
LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症 狭心症・心筋梗塞(こうそく)
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症 動脈硬化
中性脂肪
(トリグリセライド)
150mg/dL以上 高トリグリセライド血症 脂肪肝・肝障害・膵炎
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」より
※服薬開始の基準ではなく、生活習慣の改善が必要とされる目安です
※空腹時採血を原則とする。(10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は結構です。)
※厳密には中性脂肪=トリグリセライドではありませんが、ここでは健康診断などでの一般的な用法に合わせています

基準値をよくみるとLDLコレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)は基準値以上に高い場合に、それぞれ高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症として問題となるのに対して、HDLコレステロールは値が低い状態を低HDLコレステロール血症として問題にします。これが「高脂血症」という言葉が使われなくなった理由です。

脂質異常症のリスク分類と治療方針

脂質異常症のリスク分類と治療方針

血圧・禁煙歴を考慮した場合の治療方針

コレステロールだの中性脂肪だの、果てはLDLやHDLコレステロールなど多くの指標があり、結局治療をすべきかどうかどうしたらいいの?と迷われる方も多いと思います。
そんな時は、下の表を参考にしてください。
現在のコレステロール値に年齢・性別・喫煙の有無、収縮期血圧(例135/85なら135)を下の表に当てはめてみてください。その結果カテゴリーⅡ以上に該当する方は、積極的な食事と運動量をお薦めしますが、改善が難しい場合は早期の内服療法をお薦めします。
特に、善玉コレステロール(HDLコレステロール))が40未満、糖尿病疑い以上の場合、ご家族に冠動脈疾患(心臓を栄養する血管の病気:狭心症や心筋梗塞など)がある場合はカテゴリーを1段階上げて早期の内服治療をご検討ください。
また、糖尿病(確定)、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、慢性腎臓病がある場合は、カテゴリーⅢとして、早期の内服治療が必要です。

血圧・禁煙歴を考慮した場合の治療方針

LDLコレステロールとHDLコレステロールって何?

意外かもしれませんが、1日に食事からとるコレステロールの量はたった1グラムにもなりません。実は、血中のコレステロールの大部分は肝臓で合成されたものなのです。
肝臓でつくられたコレステロールは全身へ送られ細胞膜やホルモンなどをつくる材料として使われます。
しかし血中のコレステロールが必要以上に多くなると、余分なコレステロールが動脈の血管の内側にたまって「こぶ」のようなものをつくります。これが動脈硬化(アテローム性動脈硬化)とよばれる状態です。
一方、逆に血管から肝臓へ向かうコレステロールもあり、これが多いと血管にコレステロールがたまりにくくなるので動脈硬化は進みにくくなります。血管へ向かうコレステロールをLDLコレステロール、肝臓へ向かうコレステロールをHDLコレステロールとよんでいます。
わかりやすくするためにLDLコレステロールを悪玉コレステロール、HDLコレステロールを善玉コレステロールという場合もありますが、コレステロールの種類が違うわけではありません。
LDL-C値をHDL-C値で割ったL/H比というスケールがあります。
L/H比数式 以上という方は要注意。それぞれのコレステロール値が基準値内であっても、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高くなります。

コレステロールの役割

善玉・悪玉コレステロールの役割

中性脂肪(トリグリセライド)って何?

からだを動かすときにまず使われるエネルギー源(燃料)は血糖なのですが、中性脂肪は血糖に次ぐ予備燃料のような役割を果たしています。食事からとる脂肪のほとんどはこの中性脂肪になります。肉の脂身など通常頭に思い浮かぶ油脂はほとんどが中性脂肪です。
したがって食後には血中レベルが高くなり空腹で採血しないと正しい値が測定できません。また、通常中性脂肪が高い人はHDLコレステロールが低いという現象がよくみられます。
コレステロール=からだを構成するための材料として使われるのに対して、
中性脂肪=からだを動かすための燃料のような役割を果たしています。

なぜ脂質異常症は注意が必要なの?

脂質異常症があっても、通常何の症状もありません=サイレントキラー病
では、どうして健康診断で脂質を測定しているのかというとコレステロールが高いと動脈硬化を起こしやすいからです。

動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞の原因に

動脈硬化が進むと血管が狭くなり血液の流れを妨げます。心臓の筋肉に酸素と栄養を送っている冠状動脈に動脈硬化が起こると大変危険です。冠状動脈が狭くなっているとき、運動など心臓の筋肉がたくさんの酸素を必要とするような行為を行うと狭心症を発症することがあります。
また動脈硬化が進み、「こぶ」(動脈瘤)が破れるとそこで急に血液が固まって血塊をつくり、そこから先へ血液が流れなくなります。血液が流れなくなるとその先が壊死してしまうので緊急事態となります。これが冠状動脈で起これば心筋梗塞(狭心症と合わせて虚血性心疾患とよびます)、脳の動脈に起これば脳梗塞ということになります。

コレステロール値と心筋梗塞の危険性

このグラフはLDLコレステロールの値によりどのくらい心筋梗塞になりやすいかをおおよその倍率で示しています。
LDLコレステロール(LDL-C)が高くなるほど心筋梗塞になりやすいことが一目瞭然です。
中性脂肪(TG)が高い場合も虚血性心疾患を発症しやすいといわれていて、特に300mg/dLを超えるとリスクが高くなります。
HDLコレステロール(HDL-C)が40mg/dL未満と低い場合も虚血性心疾患になりやすいことがわかっています。
また高トリグリセライド血症や低HDLコレステロール血症メタボリックシンドロームの一部で、内臓脂肪の蓄積を反映している場合もあります。

LDLコレステロールと心筋梗塞のリスク

どのような注意が必要なの?

LDLコレステロールが高い場合

LDLコレステロールが高い場合は特に食事について注意が必要です。食品中の脂肪の大部分を占める中性脂肪には脂肪酸がくっついています。脂肪酸には飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸がありますが、このうち飽和脂肪酸を多く含む脂肪をたくさん食べると肝臓でのコレステロールの合成が促進されます。
一方、多価不飽和脂肪酸はむしろコレステロールの合成を抑える作用があるといわれています。要するに血中のコレステロールを下げるためには、食事中の中性脂肪の質が問題になってくるわけです。
もちろん食事中のコレステロールが多くても血中のコレステロールは高くなるので、とり過ぎは控えたほうがよいのですが、肝臓で合成されるコレステロールのほうが多いので、まず飽和脂肪酸を控えることが重要となるのです。飽和脂肪酸が多いのは動物性の脂肪ということになります。

中性脂肪が高い場合

基本的にカロリー(エネルギー)のとり過ぎに注意が必要です。よくみられるのは菓子類など糖分の多い間食や清涼飲料水、アルコールの飲み過ぎなのでこれらの量を減らす必要があります。運動不足も大敵です。

HDLコレステロールが低い場合

食事の影響をあまり受けませんが、高トリグリセライド血症と同時にある場合は、トリグリセライド(中性脂肪)を下げることでHDLコレステロールを増やすことができます。また喫煙や運動不足もHDLコレステロールを低下させます。禁煙有酸素運動でHDLコレステロールを増やすことができます。

食事療法 脂はおいしい

肥満傾向が認められる場合には、まず標準体重を目標に減量をする必要があります。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22 で計算できます。
減量は、急激にではなく、1か月間で現在の体重の5%程度の減量から始めるのが体重維持のポイントだと思ってください。
1日の摂取エネルギーは、次のように計算して求めます。
1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30(kcal/kg)
食習慣のポイントを心がけましょう。

脂質を改善するためにバランスの良い食事を
  1. コレステロール摂取量は1日300mg以下にしましょう。
  2. 動物性の脂肪を減らし、魚や植物性の脂を多くしましょう。(和食を多くとりいれる)
  3. アルコールは1日25g以下に。具体的にはビール中瓶1本、日本酒180ml、焼酎100ml程度、ワイン200ml程度。
  4. 食物繊維を多くとりましょう(食物繊維はコレステロールの吸収を抑えます)。
  5. 清涼飲料水や菓子類などの過剰摂取は控えましょう。
  6. マーガリン、ショートニング(食用加工油脂の一種)、菓子類に含まれる質の悪い脂:トランス型不飽和脂肪)の過剰摂取は控えましょう
  7. 朝食、昼食、夕食をきちんと摂りましょう。
  8. なるべく腹八分目にしましょう。
  9. 就寝前2時間前からはお食事を控えましょう。(夜食はカロリー 朝食はエネルギーとなります)
  10. よく噛(か)んで食べる。早食い、まとめ食いはできるだけ避けましょう。
  11. 外食(おいしいものには、塩分・糖・油が多い)はできるだけ控えましょう。
体によい油を摂りましょう。

コレステロールが高い場合、コレステロールの摂取量だけでなく、摂取する脂肪の種類が動脈硬化に大きな影響します。食事中に含まれる脂肪の中でも、どんなものが体にいいのかお話ししましょう。
食事の脂質の主な成分は脂肪酸という物質です。脂肪酸には、悪玉コレステロールを上昇させる質の悪い脂肪酸(飽和脂肪酸)と、逆に悪玉コレステロールを軽 度低下させる作用のある質の良い脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)があります。

質の悪い脂肪酸

飽和脂肪酸=動物性の脂肪:ラード(豚脂)、牛の脂、鶏皮、ベーコン、脂肪の多い乳製品、洋菓子、アイスクリーム、ココナッツ油などに多い。

質の良い脂肪酸

不飽和脂肪酸=植物性の脂肪、魚類の脂肪:オリーブオイル、なたね油、ゴマ油、大豆油、青魚(サバ、イワシ、アジなど)などに多い。
いずれも過剰摂取はカロリーオーバーになるので、注意が必要です。質の良い脂肪酸をとっている人はコレステロールが低いことが分かっていますので、できるだけ質の悪い脂肪分は控え、質の良い脂肪酸を摂取して、脂質異常症をより改善させる食事へ工夫してみましょう。

知っておきたいトランス脂肪酸

脂質を高温で加熱したときや、マーガリンやショートニングのように植物油を加工したときにできるもので、牛、羊、山羊などの動物の肉や乳・乳製品にも少量が含まれています。自然界の大半の脂肪酸(シス脂肪酸)とは異なった形をしています。
トランス脂肪酸を大量に摂取すると、悪玉(LDL)コレステロールが増加する一方で善玉(HDL)コレステロールが減るため、動脈硬化のリスクが高まります。
アメリカではトランス脂肪酸の健康被害の甚大さを危惧し、2003年食品中のトランス脂肪酸含有量を表示する法律が制定されました。
特に洋菓子などに含まれることが多いので、摂取量には注意しましょう。

~LDLコレステロールが特に高いと言われたら~

栄養バランスをよくしても、LDLコレステロール値が改善しない場合は、コレステロール摂取量200mg/日以下にしましょう。また、質の悪い脂を避けることも効果的です。

~中性脂肪が特に高いと言われたら~

生活習慣の改善が極めて大切です。栄養バランスの適正化を徹底しましょう。特に清涼飲料水やスナック菓子は、糖質が多く、中性脂肪を増やしやすいので、摂取量は注意が必要です。アルコールは極力控えましょう。

運動療法  継続が力

毎日何らかの形で、体を動かすことがとても重要です。運動を継続すると中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが上昇します。このほか、血圧を低下させる、糖尿病の血糖コントロールがよくなる、さらに、うつ病の予防、がん予防、動脈硬化の予防など、さまざまな良い効果があります。
逆に、運動不足で体力、とくに持久力が低下している人ほど、動脈硬化が進みやすく、がんを含めあらゆる死亡率が高いことも分かっています。食事療法と合わせ、脂質異常症治療の基本となりますので継続して行うことが肝心です。
最適な運動は有酸素運動です。1日30分程度、1週間合計180分以上、毎日行うのが理想的です。
運動の強さは、心拍数110~120/分程度を目安に、ちょっときついけど続けられる、と感じる程度。くれぐれも無理は禁物です。

脂質を改善するためには運動を
理想的な有酸素運動

散歩、ウォーキング、軽いジョギング、エアロバイク、水中歩行、サイクリング、アクアビクス、水泳などの有酸素運動は、15分以上続けると効率よく脂肪が燃えだすため、1回15分以上行うのが望ましいです。
日常生活で、運動をする時間がない場合は、現在の生活パターンを変えずにできる運動が一番現実的です。
たとえば、通勤時に「バス停一つ分歩く」「自転車で行くのを徒歩にする」「エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使ってみる」などです。雨の日は 無理をせず、最低週3回以上を目標にするのが、続けやすいポイントかもしれません。

運動の注意点

現在、治療中の病気がある場合は、運動を控えねばならないこともありますのでくれぐれも無理をなさらないでください。

薬物療法 生活習慣改善とともに

食事療法、運動療法を組み合わせても、脂質異常症が改善しない場合、内服薬での治療が必要になってきます。
(1)動脈硬化がすでに起こり、治療中の方 (2)糖尿病や高血圧、喫煙など、さらに動脈硬化が進みやすい環境にある方 (3)遺伝的に動脈硬化を起こしやすいことが分かっている方(たとえば家族性高コレステロール血症など)は、LDLコレステロールや中性脂肪をより低下させねばなりません。こうした動脈硬化のリスクが高い患者さんでは、これ以上進行しないようにすることが非常に重要で、基本的には診断時から薬物療法が必要 になります。
個々の患者さんで目標値は違いますから、治療中の方は『脂質異常症のリスク分類と治療指針』でご確認ください。
近年、脂質異常症の患者さんが増え、コレステロール、中性脂肪を低下させる薬が、広く処方されるようになりました。これらの薬は脂質異常を改善させるだけ ではなく、一部の薬では動脈硬化の進行を直接、抑え、改善させる作用もあることが分かってきています。
現在処方される薬には次のものがあります。

脂質異常症治療薬の特性と注意すべき副作用
分類 薬品名 製品名 特性 副作用
LDL-C
non LDL-C
TG HDL-C
スタチン フラバスタチン* メバロチン(細粒:0.5%[5mg/g]、1%[10mg/g]
錠:5、10mg)
↓↓↓ 横紋筋融解症、筋肉痛や脱力感などミオパチー様症状、肝障害、認知機能障害、空腹時血糖値およびHbA1c値の上昇、間質性肺炎など
シンバスタチン* リポバス(錠:5、10、20mg)
フルバスタチン* ローコール(錠:10、20、30mg)
アトルバスタチン* リピトール(錠:5、10mg)
ピタバスタチン* リバロ(錠:1、2、4mg)
ロスバスタチン クレストール血症(錠:2.5、5mg)
陰イオン交換樹脂 コレスチラミン クエストラン(粉末:44.4%[9g中焦水物として4g含有]) ↓↓ 消化器症状、脂溶性ビタミンの吸収障害
ジキタリス、ワルファリンとの併用ではそれら薬剤の薬効を減ずることがあるので注意が必要である。
コレスチミド コレバイン(ミニ:83% 1.81g/包 錠:500mg)
小腸コレステロール
トランスポーター阻害薬
エゼチミブ ゼチーア(錠:10mg) ↓↓ 消化器症状、肝障害、CK上昇
フィブラート ベザフィブラート* ベザトールSR(錠:100、200mg) ↓↓↓ ↑↑ 横紋筋融解症、肝障害など
ベザリップ(錠:100、200mg)
フェノフィブラート* リビディル(錠:53.3、80mg)
トライコア(錠:53.3、80mg)
クロフィブラート ビノグラック(カプセル:250mg)
クリノフィブラート リポクリン(錠:250mg)
ニコチン酸誘導体 トコフェロール* ユベラN(細粒:40%[400mg/g]、カプセル:100mg)、ソフトカプセル:200mg) ↓↓ 顔面紅潮や頭痛など
※日本人では多いといわれているが、慣れの現象があり、少量から開始し、漸増するか、アスピリンを併用することで解決できる。
ニセリトロール ペリジット(錠:125、250mg)
ニコモール コレキサミン(錠:200mg)
プロブコール プロブコール* シンレスタール(細粒:50%[500mg/g]、錠:250mg) ↓↓ 可逆性のQT延長や消化器症状など
ロレルコ(細粒:50%[500mg/g]、錠:250mg)
多価不飽和脂肪酸 イコサベント酸エチル* エパデール(軟カプセル:300mg) 消化器症状、出血傾向や発疹など
エパデールS(軟カプセル:300mg/包、600mg/包、900mg/包)
ソルミラン(顆粒状カプセル:600mg/1.3g、900mg/1.95g)
オメガ-3脂肪酸エチル ロトリガ(粒状カプセル:2mg/包)

* ジェネリック有り
↓↓↓:≦ -25% ↓↓: -20~-25% ↓: -10~-20%
↑↑:20~30% ↑:10~20% -:-10~10%

  1. HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
    肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを強力に低下させ、中性脂肪も低下させます。
  2. 陰イオン交換樹脂(レジン)
    腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸と結合して、コレステロールを便中に排泄させ、低下させます。
  3. 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
    腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸の再吸収を抑制することにより、コレステロールを低下させます。
  4. フィブラート系
    主に肝臓で中性脂肪が作られるのを抑える薬です。LDLコレステロール値を低下させたり、HDLコレステロール値を上昇させたりする効果もあります。
  5. ニコチン酸系
    ビタミンの一種で、肝臓で中性脂肪が作られるのを抑えます。また、HDLコレステロール値を上昇させる効果もあります。
  6. プロブコール
    LDLコレステロールを胆汁酸として排出させたり、LDLコレステロールの酸化を抑えたりして、動脈硬化を予防する働きがあります。
  7. 多価不飽和脂肪酸
    青魚に含まれる成分(不飽和脂肪酸)から作られた薬で、中性脂肪値を下げる効果があります。また、血液をサラサラにする効果もあります。

脂質異常症の治療薬は、LDLコレステロールや、トリグリセライドを低下させるだけでなく、それ自体が、血管壁の動脈硬化を改善し、脳梗塞や心筋梗塞の再 発を予防する効果が期待できることが分かってきています。しかし、薬さえ飲めば安心というわけではなく、あくまで生活習慣を改善することが重要です。

珍しくない遺伝性脂質異常症

脂質異常症のなかには、遺伝性の病気もあります。
家族性高コレステロール血症といい、遺伝性の代謝異常症の中では最も多い疾患だと言われています。
自分も当てはまるのでは、と心配される方もいらっしゃるかもしれません。その場合は当院にご来院のうえ、しっかりと動脈硬化の予防をしていきましょう。

家族性高コレステロール血症[Familial Hypercholesterolemia(FH)]

LDLコレステロールが高く、若いときから、心臓の血管に動脈硬化を起こす遺伝性の疾患です。頻度は軽症のケースが500人に1人以上、重症は100万人に1人以上と言われ、日本では25万人以上と推定されています。
症状は、若いころからLDLコレステロールが高いくらいです。一部の人では、黄色種と呼ばれるコレステロール沈着による黄色っぽい隆起をした斑点が、手の甲、膝(ひざ)、肘(ひじ)、瞼(まぶた)などに見られます。
LDLコレステロールは通常、肝臓で処理されるのですが、この疾患では肝臓で処理できないため、血液中にたまって、若い人でも動脈硬化を起こし、特に心筋梗塞、狭心症を発症させます。 心筋梗塞や狭心症の発症年齢は、男性では20歳代から起こり、40代がピーク、女性では30代から始まり、50代がピークとなります。このように、若くして心筋梗塞を中心とした動脈硬化性疾患を起こすのが特徴です。重症の場合、幼児期に心筋梗塞を発症することもあります。
遺伝性ですので、親、兄弟、叔父、叔母、祖父母、子供など、血のつながった方の中にも同じようにコレステロールが高く、心筋梗塞、狭心症などの心臓病が発症する人があることも特徴です。
このような遺伝素因を持っている患者さんは、そうでない患者さんと比べると、心臓の血管の動脈硬化が進みやすく、狭心症や心筋梗塞が早い段階で発症します。予防するには、できるだけ早く診断し、LDLコレステロールを低下させる必要があります。
診断には、LDLコレステロールの測定をはじめ、家系内調査、アキレス腱の厚さのチェック、LDL受容体遺伝子の変異検査(血液検査)などを行います。
治療は、低脂肪食の指導、薬物療法(主にスタチン系の薬剤)を行い、重症例ではLDLコレステロールを除去する治療「LDLアフェレーシス」(注)が必要になります。
定期的に血液検査や、心臓、動脈の超音波検査、運動負荷検査をして、心臓の血管に動脈硬化が起こっていないかを確かめながら治療を続ける必要があります。
(注) LDLアフェレーシス:血液透析装置のような血液を体外循環させる装置で血液中のLDLコレステロールを除去する治療法

どんな場合、家族性高コレステロール血症を疑うべきか?

①未治療のLDLコレステロールが180mg/dl以上である
②皮膚や腱に黄色腫がある
③家族(両親、祖父母、子供)で以下に当てはまる人がいる
④LDLコレステロールが180mg/dl以上
⑤脂質異常症で治療中である
⑥若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている
⑦男性は55歳以下、女性は65歳以下

自分や家族も、もしかしたらと思われた方は、ぜひご相談ください。

妊娠・出産期の薬物療法は?

脂質異常症は、女性の場合は閉経後に悪化する場合が多いのですが、家族性高コレステロール血症など一部の遺伝性の脂質異常症の場合、もっと若いときから薬物療法が必要になります。
その場合、薬物治療中に妊娠・出産の機会があることも考えられます。スタチン系の薬剤は、妊娠する可能性がある段階で中止する必要があります。必ずご相談ください。

おわりに

脂質異常症は、やっかいな病気です。最初は数値の異常でしかないのですが、症状のないうちに全身の動脈がむしばまれ、動脈硬化が進むからです。
その動脈硬化の進行具合は、体質や日々の生活習慣が関係し、人によってさまざまです。症状がないから大丈夫、ではないのです。
遺伝を含めた自分の体質や、生活習慣、現在治療中の病気などをひっくるめて、動脈硬化を起こさずに若い血管のままで元気に生活するにはどうしたらいいのか、じっくり自分に向き合って考えてみてください。
脂質異常症は、動脈硬化の一番大きな原因ですが、ご自分にとって必要な予防法を実践すれば防げるものです。症状がないうちから始め、生涯続けられるよう、まずは生活習慣の工夫から始めてみてください。先手必勝です。

サイレントキラー

脂質異常症Q&A

①昔は「高脂血症」といったような気がしますが「脂質異常症」との違いはなんですか?

回答)LDL-C高値やTG高値は動脈硬化性疾患との関連が深いですが、HDL-C低値も 動脈硬化性疾患と非常に関係の強い病態です。以前は「高脂血症」という診断名がこれらすべての病態に対して使われていましたが、文字通り脂質値が高くなる場合(LDL-C、TG)だけでなく、低HDL-C血症も動脈硬化性疾患の危険因子として強く認識していただきたい、との意図も込め、日本動脈硬化学会では2007年の動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に際し、診断名「高脂血 症」を「脂質異常症」に改訂することになったわけです。

②LDL-Cを重視するのはどうしてですか?

回答)動脈硬化巣の初期病変であるプラークの内部にはコレステロールが沈着していますが、このコレステロールはLDLに由来するものであることが判明しています。また LDL-Cを低下させることで動脈硬化性疾患が減少することも確認されています。このように動脈硬化に密接に関係しているコレステロールはLDLに含まれるコレステロールが主なのです。

③会社の検診ではTCは測定していませんがよいのでしょうか?

回答)HDLコレステロール数値が高い為に、総コレステロール数値も向上している方も多くいることがわかりました。
その為、脂質異常症などの診断基準に用いる検査項目として、総コレステロールを用いることは、脂質の異常値を正しく反映していない可能性をもつことにもつながってくるため、現在では総コレステロール数値を診断基準から除外することがあります。
しかし、動脈硬化に影響するLDL-Cは、病態により組成や性質が変化するため、LDL-Cの絶対的な標準物質は存在しないため、LDL-Cを正確に測定することはできません。そのため、LDL-C値は、Friedewaldという換算式(F式)で計算しています。
F式:LDL・C=TC-HDL・C-TG/5
(BQ法という直接測定法もありますが、多くの血液や時間・熟練した手技を必要とするため、一般の臨床検査で行うことはできません)。
しかし、F式は、空腹時の採血でTGが400mg/dL未満でないと使えません。そのためF式が使えないときなどではnonHDL-Cを治療目標値として用います。
non HDL・C=TC-HDL・C
また、絶対リスクの算出にはTCを用います。このような理由からTCの測定は必要です。
実は、最近用いられるようになったのが、LDL直接法(またはホモジニアス法)です。この方法はわが国で開発されました。直接法の特徴は、再現性がよい ことと、測定値に食事の影響が少ないことです。しかし、試薬によりバラつきがあり動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは積極的には推奨されていません。

④LDLコレステロール値が計算式から計算したものと、実際の健康診断で測ったものが違っています。どちらを信じればいいのでしょうか?

回答)③のように、中性脂肪TG≧400 mg/dLの場合、直接法と計算式ではともに精度が落ちます。
また、直説法は試薬の標準化がされていないので安定はしません。
そこで
a. トリグリセライド(中性脂肪)が400mg/dL未満で、計算法と直接法の値に違いがある場合→直接法の精度が十分でない可能性があり、計算法によって得られたLDLコレステロール値を脂質管理の指標とすることが勧められています。
b. トリグリセライド(中性脂肪)が400mg/dLを超える場合→計算法の値も、直接法の値も、いずれも精度がひくいため、nonHDLコレステロール値を脂質管理の指標に用いることが勧められています。nonHDLコレステロールの脂質管理目標値は、LDLコレステロール値+30mg/dLとされています。

⑤HDLコレステロールの値が高過ぎるのですが問題はありませんか?

回答)一般的にHDLコレステロールが高いことは好ましいことですが、100mg/dLを超えるような場合には、定期的な検査を受けることが望まれます。
遺伝的な原因や、肝障害などがあってHDLを代謝する酵素の働きが足りないような場合に、HDLコレステロール値が非常に高くなることがあります。このような状態、すなわち高HDLコレステロール血症の目安は一般に100mg/dL以上とされています。高HDLコレステロール血症が、心臓や脳の病気にどのような影響があるかは、今のところ、よく分かっていませんが、良い影響があるとは言えないという研究結果もあります。
高HDLコレステロール血症の方は、LDLコレステロール値が低くても、年に1回程度は心臓や脳の検査を受けることが望ましいでしょう。

⑥コレステロール値を下げ過ぎると、がんや脳出血を起こしやすくなることがあると聞きましたが、本当でしょうか?

回答)薬でコレステロールを下げても、がんや脳出血を起こしやすくなることはありません。
コレステロールの低い方では、がんの患者さんが多く、死亡率も高いという観察研究結果があります。しかしこれは、がんになり衰弱するとコレステロールが下がるためと考えられています。
また、コレステロールが低いと脳出血を起こす方が多いという話がありますが、これはコレステロールが低い方の中に、栄養状態が悪く、塩分の多い食事をとっている傾向があり、もろくなった血管に高血圧が加わって脳出血を起こしやすいためと考えられています。
一方、これまで日本を含む世界各国で行われたコレステロールを下げる治療の結果をみる臨床試験では、コレステロールを下げ過ぎることで、がんや脳出血が増えるという結果は出ていません。

横紋筋融解症という副作用が出る治療薬もあると聞きました。どのような症状が出たら、この副作用が疑われるのですか?

回答)体に力が入らず立ち上がれないような脱力感が出たり、尿がコーラのような茶褐色になったりするようなことがあれば、横紋筋融解症が起こっている可能性があります。
横紋筋融解症とは、体をささえ動かす筋肉(骨格筋)の細胞が何らかの原因でこわれることにより、細胞の成分が血液中へ流れ出ている状態です。この状態を放っておくと、腎臓などに重い障害が起こることがあります。横紋筋融解症が起きたという報告の数は多いわけではなく、脂質異常症の治療薬のほかにも、痛みや炎症を抑える薬、尿酸値を下げる薬、胃酸を抑える薬など、さまざまな薬の服用によって起こることがあります。また、激しい運動や、外傷、大量の飲酒などによっても起こります。
脱力感や原因の思い当たらない筋肉痛、コーラ色の尿などがみられたら、薬の服用をやめて、できるだけ早くご相談ください。